2023年8月27日(日)石川県輪島漆芸美術館で開催された講演会《重要無形文化財とその保持者とは?ー「わざ」を未来へ伝える仕組みー》に行ってきました。
www.art.city.wajima.ishikawa.jp
私は輪島の漆芸研修所で人間国宝の先生方に教えて頂いたこともあり、“人間国宝”とはどのような制度か一応の認識はあるつもりでしたが、正確に言葉で説明できるかと言われたら自信がない...😓と思って参加させていただきました。
以下、講演会で聴いたことを元に概要をまとめてみました。
人間国宝は通称である
人間国宝は重要無形文化財保持者(各個認定)に認定された人物の通称であり、文化財保護法に正式に人間国宝という言葉は用いられていません。
昨日の講演によると、昭和30年に初めて重要無形文化財保持者が認定された際に、新聞報道で人間国宝という言葉が用いられたのが始まりだそうです。
重要無形文化財保持者とは
文化財保護法では、文化財は有形文化財、無形文化財、民族文化財、記念物、文化的景観、伝統的建造物群の6種類に分類されています。
その6種類のうち、通称人間国宝(重要無形文化財保持者)はどれにあてはまるのかというと、重要無形文化財保持者という言葉に含まれているとおり、無形文化財です。
無形文化財とは、文化財保護法によると「演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとって歴史上または芸術上価値の高いもの」のことで、その中でも重要なものが文部科学大臣により重要無形文化財に指定されています。
重要無形文化財の特殊な点は、日光東照宮のような有形文化財はその建物自体が重要文化財や国宝(重要文化財の中でも特に価値が高いもの)に指定されているのに対し、重要無形文化財はその技術とその技術をもつ存在(人や団体)が指定されるという2つのステップがあることだそうです。
例えば「蒔絵」の場合、「蒔絵」が重要無形文化財であり、その技術をもつ存在が重要無形文化財「蒔絵」の保持者となります。
重要無形文化財保持者を指定する目的
重要無形文化財の指定の目的は、それらの技術が大事なものであると皆で認識し、その技術を未来へ残していくためにあります。
人間国宝(重要無形文化財保持者)とはそれらの高度な技術を身につけている人であり、その技術を次の時代に残していくために、後進の育成や多くの人にその技術を伝える役割を担う人なのです。
おまけ 重要無形文化財「輪島塗」と伝統的工芸品「輪島塗」
重要無形文化財には「輪島塗」も指定されており、その技術の保持団体は輪島塗技術保存会です。
それと同時に輪島塗については、伝統的工芸品に指定されている、というのも聞いたことがないでしょうか?
伝統的工芸品とは、伝産法(伝統的工芸品産業の振興に関する法律)に定められた条件を満たす技法や材料、地域で製造され、経済産業大臣の指定を受けたものです。
重要無形文化財がその技術を指定しているのに対し、伝統的工芸品は製造されたそのものを指定している点で違いがあり、指定を受けるのも重要無形文化財は文部科学大臣で、伝統的工芸品は経済産業大臣という違いがあります。
初めて聞く人にはなかなかわかりずらい違いなのではないかと思うのですが、どちらも日本の伝統を守り、技術を受け継いでいくという考えがベースにあり、伝統的工芸品はより産業を意識した制度なのかなと思います。
いかがでしたでしょうか?
「人間国宝」や「重要無形文化財」「伝統的工芸品」といった言葉は、漆芸作品や輪島塗をご覧になる際にはよく聞く言葉だと思うので、鑑賞の際のご参考になれば幸いです。