輪島塗はどのようにつくられているのか、こちらの記事の作品を例に、輪島塗の制作工程をご紹介させていただきます。
こちらの作品は、私たち「蒔絵工房 旬粋」がプロデューサーとして、木地、下地〜中塗り、研ぎ、上塗り、蒔絵、呂色まで、計6名の各工程のベテランの職人さんに仕事を依頼して制作させていただきました。
「涼夏蒔絵輪島塗手文庫」制作工程
木地
今回の手文庫の素地はこのような桐材の指物木地です。
指物(さしもの)は板状の木材を釘などを使用せずに組み上げる技法で、箪笥などの家具や重箱など箱状のものを制作するのに用いられています。
木地の制作方法には指物の他にも挽物(ひきもの)、曲物(まげもの)、刳物(くりもの)といった方法があります。
用いられる木の種類は技法により様々ですが、指物の場合は桐の他にヒノキやアテなどが用いられます。
下地~中塗り
輪島塗は本堅地という技法で制作されています。
↓ まず先ほどの木地に漆を染み込ませ、そのあと漆と米糊を合わせたもので布を貼って木地の強度を増します。
↓ 次に地の粉を混ぜた下地漆をヘラでつけていきます。
地の粉は輪島でのみ用いられている材料で、輪島市内で採掘される珪藻土(けいそうど)を焼成し、粉砕、ふるいわけしたものです。
工程は 一辺地 → 二辺地 → 三辺地 と粗いものから細かいものへと移っていき、それらの下地を塗っては砥石で研いでを繰り返すことで、木地をより丈夫にするとともに、地肌をなめらかに整えていきます。
↓ 下地が終わったら、中塗りです。
最終的な上塗りをする前に、漆を塗っては研いでを何度か繰り返すことで、より平滑できめ細やかな美しい艶のある面をつくることができます。
上塗り
美しい漆の塗り面をつくる、塗りの作業の中で最も重要な工程です。
刷毛目が残ったり、漆が縮んだりしないように漆や刷毛、部屋の温度や湿度を調整し、塵やほこりがつかないよう慎重に作業を行います。
加飾(蒔絵)
輪島塗でいうと、加飾の方法には蒔絵と沈金があります。
今回の手文庫は蒔絵での加飾を行いました。
↓ まずは上塗りした表面を炭で研ぎ、図案を転写します。
↓ 水紋に螺鈿を貼り、金魚の鱗を骨描きといって、細い線を漆で描き、金粉を蒔きます。
↓ 漆で塗り込んで...
↓ 研ぎ出します
↓ 奥行きを出すため金魚の層を完成させてから、次に朝顔の部分の蒔絵を進めます。
朝顔には金粉と青金粉を蒔いています。
↓ 朝顔の部分に漆を塗り込み、研ぎ出して、最後に呂色という表面を磨いて漆の艶を出す工程を行って完成です。
いかがでしたでしょうか?
なかなか簡潔に説明するのが難しく、省略してしまっている部分も多いのですが、輪島塗はこのように全て人の手で丁寧に仕事を積み重ねて制作されています。
大変多くの時間と手間がかかるので、時代に逆行した製法のように思われるかもしれませんが、この手間と時間が漆という素材のもつ美しさを引き出す秘訣でもあるのです。